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ポテチの好きな映画についてと感想

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ジョゼと虎と魚たち 2003

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犬童一心監督作品「ジョゼと虎と魚たち」について

大学生の恒夫は、深夜に麻雀屋でアルバイトをしている。
今日の客の話題は、最近近所で見かける謎の乳母車を押して歩く老婆のこと。
明け方、恒夫は、坂の上から乳母車が走ってくるのに遭遇する。
激突した乳母車に近寄り、中を覗くと、包丁を握り締めた少女が。
恒夫は危うく刺されそうになるが、間一髪で難を逃れる。
それがジョゼとの出会いだった。

彼女は原因不明の病で生まれてから一度も歩いたことがないという。
老婆は近所に孫の存在を隠して暮らしており、
夜明け間もない時間に乳母車に乗せて散歩させていた。
そのまま恒夫は老婆とジョゼの家に連れて行かれ、
美味しい朝食をごちそうになる。
恒夫は、不思議な存在感を持つジョゼに興味を持つことに。

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一方で恒夫は、大学の同級生の香苗に好意を持っている。
福祉関係の就職を希望している香苗との会話のネタに、
脚の悪いジョゼが家の中のあっちこちから
ダイブすることなども持ち出したりするが、
思うように関係は進まない。
ジョゼのことも気になる恒夫は、事あるごとに家を訪ねる。

ジョゼの部屋には祖母が拾ってきた様々なジャンルの本がある。
その中から、恒夫が抜き出した1冊が、
フランソワーズ・サガンの『一年ののち』。
いつもそっけないジョゼが、その本の続編を読みたいと強く言う。
恒夫は既に絶版となっていた続篇『すばらしい雲』を古本屋で探し出し、
プレゼントする。
「ねぇ、その主人公がジョゼっていうんだよね?」
恒夫の問いかけにジョゼは全く応じず、
夢中で本を読みながら柔らかな笑みを浮かべる。
そんなジョゼを見つめながら、恒夫も微笑む。

恒夫の計らいで国の補助金がおり、ジョゼの家の改築工事が始まった。
完成が迫ったある日、突然、香苗が見学に訪れ、戸惑う恒夫。
「彼女? 恒夫くんが言っていた、すごい元気な女の子」
押入れの中で2人の会話を聞きながらうつむくジョゼ。
その日の夜、再び恒夫はジョゼを訪ねると、
ジョゼは泣きながら本を投げつけ「帰れ!」と叫び、
老婆に、もう2度と来ないようにと釘をさされる。

数ヵ月後。
就職活動中の恒夫は、ジョゼの家の改築工事をした会社の見学へ。
工事で知り合った現場主任から、
ジョゼの祖母である老婆が急逝したことを知らされ、
ジョゼの家へと急ぐ。
ジョゼは静かに恒夫を家に招きいれる。
お葬式から最近の暮らしぶりまで、淡々と語るジョゼだったが、
恒夫がジョゼの行動に口をはさんだ途端、
わめきながら恒夫の背中を殴り始める。
その怒鳴り声はいつしか泣き声に変わり、
やがて2人はお互いの存在を確認しあう様にひとつになる。

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それから恒夫とジョゼは一緒に暮らし始める。
ある日、2人は動物園に行って虎を見る。
ジョゼには夢があった。
いつか好きな男ができた時に、
世の中で1番怖いものである「虎」を見ることだった。
檻の向こうで吼える虎と、怯えて恒夫の腕にしがみつくジョゼ。
それを見ながら恒夫は優しく笑う。
しかし2人で過ごすささやかな幸せは、長くは続かなかった。


ちなみにこの「ジョゼと虎と魚たち」というタイトル。
「虎」はジョゼにとって恒夫との愛の絶頂期の象徴で、
「魚たち」は恒夫との翳りの確信の象徴である。

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思い上がりのロマンチストな青年と現実を見通して先へと踏み出す少女。
この2人のみせる純愛物語は、
見方によってはちょっと「偽善的」かもしれない。
なぜなら、今時の普通の大学生が、
たまたま知り合った身障者の女の子に興味をもち、
その家に入りびたり、恋に落ち、一緒に生活し、帰省する途中一緒に旅行し、
実家に連れていき、親に紹介して結婚。
2人で仲良く幸せに暮らしました、おしまい。
.....とは、絶対にいかないはずなのは目に見えているから。
案の定、いかにもそうなりそうに物語は進んでいくけど、
恒夫の帰省するところで挫折。
やっぱり、そうはいかなかったので納得なんですが、
私としては幸せになってほしかったな。と、
別の意味で納得いく様な画期的な裏切りがあったら良かったなと思います。

この2人が別れた理由は、恒夫曰く、「ボクが引いたこと」。
セックスフレンドも本命の彼女もいる、よくモテる男。
そんな男が良い意味でジョゼに興味を持ち、妙な自信があるせいか、
俺ならきっと彼女を幸せに出来る!と思い上がってしまってこの結果。
現実は厳しいものである。
それに対してジョゼの反応が素晴らしく潔い。
普通女性なら、ここまでの関係ができてしまうと、
それを容易に手放そうとしないはず。
だから、あちこちでは男女の別れの時に「修羅場」が訪れることになり、
地獄を見るのがオチですが、きれいに2人をお別れしている。

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帰省を断念した途中で泊まった海のほとりにある
ラブホテル「魚の館」の場面。
SEXした後、ジョゼは恒夫に対して
「私は海の底深くに住んでいた」と語り始める。
さらにジョゼは「恒夫が私の元を離れていったら、
また海の底に戻ることになる」と言う。
そして「それもまたいいや」とつぶやいて2人は眠りにつく。
そんなジョゼの言葉を聞いていた恒夫は、
そのことに異論を差し挟まなかったのが印象的。
よくあるパターンだと、そんなセリフに対して男ならすかさず、
「何を言っているんだ、ボクは一生君を離さないよ」
とか言ってしまいがちだけど、彼は黙ったまま目を閉じる。
恒夫もジョゼと別れる時がくるという気持を感じつつも、
あえてそれを安易に隠さない。

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関係が終わった後、恒夫はボロボロに泣き崩れるものの、
傍らには本命の彼女。
男のズルさそのものだけど、なぜか憎めない。
そう、いうものなんでしょうね、男って。
そんな感じでジョゼはこうなることも引っ括めて想えた、だからこそ、
この2人の関係が成り立っていたわけで、
同時にきれいな「別れ」が実現できたのだと思う。

ジョゼは、この関係をきっかけに社会対して切り進んで行く。
障害者用の乗り物を乗りこなして坂道を下っていく最後の場面に、
北斗の拳ならではの「漢」を感じるのは私だけではないと思う。

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ちなみに幼い頃、ジョゼと同じ施設で育った幸治の存在。
今は成長し、鉄工所で労働者として働く一人前の若者だが、
今だにジョゼはこの幸治の母親気取りで、
何でも命令口調なのが面白くない。
幸治が使う言葉は乱暴そのものだし、
ボキャブラリーも乏しい、おバカなヤンキー。
不器用ながら、そして胡散臭いと感じつつも
ジョゼを見守ってる姿が微笑ましくって、
個人的にはこの映画で1番好きなキャラクターです。
あとはジョゼのお婆さん。
あの不気味さとジョゼを「こわれモノ」呼ばわりする
後ろ向きキャラクターといったところでしょうが、
所詮、密やかに静かに日々の時間を過ごしていくだけこそ
人生だと達観したもの故の、彼女の価値観や人生観なんでしょうね。
本当に難しいものです。

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