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ポテチの好きな映画についてと感想

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Inland Empire 2006

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デビッド・リンチ監督作品「インランド・エンパイア」について

ハリウッド女優のニッキー・グレースは、
街の実力者の夫と豪邸で暮らしている。
ある日、ニッキーは「暗い明日の空の上で」という
映画の主演に抜擢されることに。
キングスリー監督ともう1人の主役であるデヴォン・バークと共に
製作に意欲を燃やすニッキー。

しかし、この映画「暗い明日の空の上で」。
実は曰く付きのポーランド民話を元にした
映画「47」のリメイク作品で、この映画は主演の2人が撮影中に殺され、
未完になったという企画であった。
それでも女優の再起を狙うニッキーは製作を進めていくのだが、
精力的にその役にのめり込めばのめり込むほど、
この脚本に込められていた呪いの様な「ファントム」を呼び起こし、
その作用の働きによって、
彼女の中で現実と虚構の境界が曖昧になっていくことに。

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リメイク版映画の世界での共演者との不倫。
時折、垣間見える3人のウサギ人間たちが居る50年代風の部屋。
オリジナル版映画「47」での世界と、
その関係者が居る寂れた雰囲気のポーランドの夜の街。
その世界をモニターで見つめる
呪いの世界に閉じ込められたロスト・ガールたち。
ニッキーの追求を阻み、
この「内なる帝国」に捕らえようとする「ファントム」、
そして、その作用を阻止するべく密かに動き始める関係者たちの想い。
その幾つかの世界での事情が次第に入り混じり合い、
何が真実で何が偽りの妄想なのか。
そんな悪夢の様な連続に翻弄されつつも、突き進んでいくニッキー。
やがて現実での映画が撮り終えた直後、
「ファントム」と直接対峙することに....

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ここからは友人と話した結果、
この物語における自分なりの解釈なのですが、
ある「不倫」という不貞行為をテーマにしたポーランド民話に対して、
それを好しとしない様々な人々の想いが凝り固まって形成された悪意の塊。
やがてそれが独り歩きして「ファントム」という悪の象徴となり、
オリジナル版「47」のヒロイン・スーザンの夫をサーカス団に追いやり、
彼女を隣人のクリンプという男と不倫をさせ、
帰ってきた夫に殺させたり、
オリジナル版のヒロインを演じた女優に不倫をけしかけて殺したりと、
触る人たち全てに取り憑き、殺害、
そしてそのモノが支配する「内なる帝国」に閉じ込めてきました。

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再び映画のリメイク化によって、
この支配がままならずにして破壊される可能性を感じ、
同時に巨大化するべく我策して表の世界に降臨しようとする「ファントム」。
リメイク版のヒロインに抜擢されたニッキーを手始めに、
相手役のデヴォンと不倫させて悪の道に陥れて取り憑こうとするのですが、
彼女はなかなか潔く堕ちないし、
むしろ、挑む様に映画の役作りに没頭し突き進んできます。
それが殺されても今だ囚われている人たちに希望を与えることとなり、
「ファントム」の力を恐れつつも、
降霊会の年寄り達やロスト・ガールたちを始めとする
各世界の囚人たちがウサギ人間の世界の部屋を通じてコンタクトし、
少しずつニッキーに助言や力を与え、先に進ませます。
それでも「ファントム」の力は強大で、
リメイク版の不倫相手・ビリーの妻に殺しを命じたり、
幾つもの世界をより複雑に歪ませたりと、
かなり翻弄させて彼女をボロボロにするのですが、
見事、リメイク版「暗い明日の空の上で」を最後まで演じ切ります。

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そして、降霊会の年寄りからスーザンの夫に託された拳銃を彼女が引き継ぎ、
ロスト・ガールたちの存在を理解して、
「ファントム」に挑みます。

彼女が何発も撃ち抜いたはずの「ファントム」は倒れずに、
ニッキー自身に変身します。
それで一瞬怯んでしまうものの、意を決して、
彼女自身の邪な欲望にシンクロしたそれを見事に撃ち抜いて消滅させます。
すると今まで開くことのなかった牢獄の扉が開き、
モニターの映像を泣きながら観ていたスーザンの部屋に彼女が現れ、
2人は抱擁するも、すぐに生きているニッキーは消えてしまいます。

スーザンはその後に部屋から出ると、自宅に通じ、
そこに彼女の夫と少年が待っていて、
その少年は不倫で出来た子供なのでしょうが、
きっと許されたのでしょう。
優しく幸せそうに抱き合います。
それを察した囚われていた者たちが外に逃げ出しはじめ、光の中へ、
すなわち、成仏に至るのです。

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最後のエンドロール。
初めの場面での近所に引っ越して挨拶にきた女性の言葉。
彼女は扉をくぐって分身をつくり出した少年の様に、分裂し、「悪魔」すなわち、
邪まな方向へ走ってしまう自分と呪いを解放しようとする自分とに分かれ、
それから市場を抜ける少女の様に、裏道を通って呪いの解放を成就させ、
現実へ戻って来れた。
その清楚で静かに長椅子に腰掛けている姿の神々しいことといったら! 
その成功に、彼女が裏道を通って辿り着いた彼女自身の「内なる宮殿」にて、
呪いの中で苦しみ、解放された亡霊たちが囲って楽しく踊りまくり、
祝福している場面は涙が出てくるほど感動します。

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この映画の面白さは、
デビッド・リンチ監督が仕掛けた複雑に絡みまくった悪夢を
深読みしまくって、自分なりに暴いていくことだろうと思います。
時間がある時にじっくり、この悪夢を体感してほしいです。
他の映画の様にただ観ているだけだと、
なんだこれは!? という陳腐な結果に堕ち入るという、
ストレス堪りまくりの散々な結果となるのですが、
理解した瞬間の爽快さはもう格別。
その一言に尽きます。

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