2010/07/22 Category : ハ行 The Butterfly Effect 2004 映画「バタフライ・エフェクト」について 幼い頃から度々記憶を失っていた主人公エヴァンは、 治療のために日記をつけ始める。 13歳の頃、幼なじみのケイリーたちと悪戯をして大事故をひき起こす。 その瞬間も彼の記憶は空白。それが元で本人皆無のまま、 エヴァンは引っ越すことになり、 性的虐待傾向のある父と反社会傾向な兄と暮らすケイリーとしばしの別れ.... ....時が経ち、大学生となったエヴァンは、 記憶を失うこともなくなっていた。 結局、エヴァンは失われた記憶の中に意識を戻す能力が備わり、 壊れてしまった愛する幼なじみの人生を救うべく、 過去を変えようと奮闘するのだけど、 その先には、その都度、ハッピーエンドには程遠い結果待っている。 この映画のタイトル「バタフライ・エフェクト」とは、 「蝶のはばたきが地球の裏側では竜巻を引き起こす」という、 わずかな違いが後に大きな結果の差を生む カオス理論を象徴する言葉だそうで、 昔から、「嗚呼〜、もしもあの時こうしていれば〜」と、 未知の運命に思いをはせまくりの私でしたが、 正にこの物語はその心理にうまく訴える、 巧妙で意外性のあるサスペンスでもう、面白い通り越して、 次元が違うそれぞれの私が全く別ものとか、 なんだかいろいろ考えさせられました。 PR
2010/07/28 Category : バズ・ラーマン Moulin Rouge! 2001 バズ・ラーマン監督作品「ムーラン・ルージュ」について パリ、1900年。 作家を目指してモンマルトルにやってきた青年・クリスチャンは、 ひょんなことからショーの台本を代理で担当することになった ナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」のスター、 高級娼婦・サティーンに恋をする。 女優になるためにパトロンを探していたサティーンは、 クリスチャンを公爵だと勘違いしてベッドに誘い込もうとするが、 詩を口ずさむ彼に本気で恋してしまう。 クリスチャンが貧乏作家だと知っても、もはや恋の炎は消えなかった。 作家と女優の関係を装いつつ愛し合う2人だったが、 オーナーのジドラーにキスの現場を見られてしまい、 サティーンは資産家の公爵のもとへ行くように命じられる。 やがて公爵がクリスチャンに激怒。 さらに結核で自分の死期が近いことを知ったサティーンは、 クリスチャンと別れることを決意する。 しかしムーラン・ルージュの舞台で芝居と現実がシンクロしていく中、 2人の愛は再び燃え上がった。 その最たる時にサティーンは舞台で亡くなってしまう。 失意でしばらく呆然と過ごす後、 クリスチャンは心から愛した女の物語を タイプライターで書き始めるのだった。 いくつもの障害があればあるほど燃える恋愛をして、 永遠に結ばれる。 いつかは自分もそうなると夢見ていたのは、 いつだったか忘れてしまいました。 愛の絶頂時に彼女が死に、彼は生きることを一時見失うも、 また再生していく。 忘れて気持ちが楽になったからではなくて、痛みが一部になったから。 ある意味結ばれたことになるけど、やっぱり隣に居なけりゃ、 時より、空しくなるものです。 とにかくこの映画は、演出のド派手で絢爛豪華な美しさ、 ニコール・キッドマンのお高い娼婦から可愛い女の子にみせる姿、 ユアン・マクレガーの素晴らしい歌声などなど、 とにかく、「素敵過ぎ」この一言に尽きます。 ただ、感情移入して魅入るとボロボロと過去が甦って、 ひたすら堕ちていきますが。
2010/07/21 Category : デビッド・リンチ Eraserhead1977 デビッド・リンチ監督作品「イレイザーヘッド」について 舞台はフィラデルフィアの工業地帯。 モジャモジャ頭が特徴の印刷工ヘンリー・スペンサーは、 着古したスーツをいつも着て異様な歩き方をする青年である。 ある日、ヘンリーは付き合っている女性・メアリーXから 奇妙な赤ん坊を出産したことを告白される。 ヘンリーは彼女の家族の家に食事に招待されるが、 出されたチキンの丸焼きが突然ガタガタと手足をばたつかせてもがき始める。 ヘンリーはどうしたらいいのかわからず、 とりあえずナイフでチキンの腹を切るとドロドロと血が溢れ出す。 彼女との結婚を決意する。 その赤ん坊は異様に小さく奇形であったが、ヘンリーは驚く様子もない。 こうしてヘンリーとメアリーX、そして赤ん坊の新婚生活が始まるが、 赤ん坊は絶えず甲高い泣き声でピーピーと泣き、 その異様な声に悩まされ、ノイローゼになったメアリーXは、 いきなりヘンリーの寝ているベッドのパイプ部分をつかむと ガタガタと揺さぶって、どこかへ去ってしまう。 薄暗いアパートに残されたヘンリーは次第に精神に破綻をきたしていく。 ある日、ヘンリーは部屋の備え付けのラジエーターを なんとなく覗きこんでみる。 するとそこは、なにかの舞台の様なものが見えた。 のんきなピアノの音と共に、舞台の上に踊り子が現れる。 しかし、その踊り子の両方の頬には、大きな瘤のようなできもので 腫れあがっていた。 頬に瘤をぶらさげた踊り子は天使のような声で歌を歌う。 歌っていると天井からなにかがボタボタと落ちてくる。 床に落ちたそれは、精子かなにかのような形をしたグロテスクなもので、 どうやら生きているらしくモゾモゾと動いている。 瘤の踊り子は、なにやらいたずらでもする様に微笑みながら、 床に落ちた不気味な生き物を踏み殺していく。 ヘンリーの首がいきなり転がり落ち、道路にゴロゴロと転がる。 子供がやってきてその首を拾い、薄汚い工場に持っていく。 工場の主はその首をなにかの機械に入れると、 機械はヘンリーの首を加工して消しゴム(イレイザー)を作る。 工場主が消しゴムで紙に書かれた文字を消し、 消しゴムのカスをばっと手で払うと、まるで雪のように 消しゴムのカスが舞い落ちる暗闇の中に、再び首と胴がつながった ヘンリーが復活する。 真夜中、ギャアギャア泣きつづける奇形の赤ん坊の腹にハサミを突き刺す。 ハサミの刺さった赤ん坊の腹からなにやら白いヘドロのようなものが溢れ出す。 赤ん坊の首がろくろっくびのように伸び、 しかも首の数がいくつにも増えヘンリーに襲いかかってくる。 そして....ヘンリーはいつの間にか、 あのラジエーターの中にあった舞台の上に立っていた。 傍らには瘤の踊り子が立ち、ヘンリーの肩に手を回す。 周囲にはなにやら機械のうなりの様な轟音が鳴り響く。 轟音は次第に大きくなっていく。 踊り子はヘンリーにキスをする。 轟音はもはや耳をふさぐばかりに大きくなり、 これ以上耐えられないと言うぐらいになった瞬間、 いきなり、ブツリと、映像が消え映画は終了する。 もはやこんな悪夢としかいいようのない内容を説明するのは、 私には無理です。 これはきっとデビッド・リンチ監督の頭に浮かんだ悪夢を 映像化したものだというしかない。 説明は一切不能。 ただ、奇形の胎児、踏み潰される精子などといったイメージからは、 なにか「出産」、あるいは「誕生」に対する 恐怖やトラウマを感じることが出来ます。 「生命」そのものを不安、もしくは恐怖していたのではないでしょうか? その一方で生命を持たない機械、工場などに安心している様に感じられます。 この映画には工場の場面が多く、 また音楽の代わりに工場から発せられるノイズが全編を覆い尽くしています。 しかし、この映画を観る者にとっては、終始言いようの無い不安感と グロテスクな映像による不快感ばかり。 なんだかこの映画自体、精神を病んでいるかの様です。 なのになぜか気が咎める反面、手を出してしまう。 また観終わると、 やはりこの映画は気味が悪く、異常だったと後悔することに。 しかし、そんな異常な映像を見ることが、 なぜか快感にもなっている気がします。 ....この映画は、危険な薬物に似ている。 好きとか嫌いとか関係ない。 ただ、観る者の精神を確実に蝕むにもかかわらず、 服用せずにはいられない。 そんな麻薬の様な映画であります。