2010/07/19 Category : ラ行 The Fall 2006 ターセム監督作品「落下の王国」について 時は1915年。映画の撮影中、橋から落ちて負う怪我を負い、 病室のベッドに横たわるスタントマンのロイは、 追い討ちをかけるように、私生活でも恋人を主演俳優に奪われ、 自暴自棄になっていた。 そんな彼のところに現れたのが、オレンジの木から落ち、 腕を骨折して入院していた5歳の少女、アレクサンドリア。 ロイは動けない自分に代わって、 自殺するための薬を薬剤室から盗んでこさせるべく、 純真無垢な彼女を利用することを計画。 アレクサンドリアの気を引こうと、思いつきの物語を聞かせ始めます。 後半、彼のほしがる薬をこっそり取ろうとした少女は、 よじ登った棚から落ちて思いもがけない怪我を負います。 (落下して手術するシーンは幻想的なパペットアニメーションで それがブラザーズクエイのようなダークファンタジー風))自分の行為が、 思いもかけない悲劇を引き起こしてしまった事を後悔する彼。 責め立てる医者。 手術から目が覚めて、目の前で自分を見守る彼に “お話”をせがむ少女。 お話の続きをする彼に、主人公を殺さないでと懇願します。 お話のキャラを次々と殺す彼。 殺さないでと泣く少女。 それは、同時に彼に対して “生きて” というメッセージでもあるのでした。 自殺をする心境って正直全くわかりません。 人生永く生きていると時々、 死んだ方がましかもと思うようなことは多々あります。 死んでも来世があるのを信じているせいでしょうか。 何かしら、影響を受けてしまいそうで、 それをしようという気持ちになりません。 別に悪いことではないと思ってるのですが、 なぜか、死なない方でよかった、 自然の成り行きの過程から外れなかったというか、 生きている者同士として、そう、考える自分がいるのでした。 PR
2010/07/19 Category : ア行 Manuale d'amore 2005 ジョヴァンニ・ヴェロネージ監督作品 「イタリア的、恋愛マニュアル」について この物語はそれぞれが微妙に繋がった4つのオムニバス構成になっています。 「めぐり逢って」偶然出会ったジュリアに一目惚れしたトンマーゾ。 まったく相手にされない彼だったが.... 「すれ違って」倦怠期に入ったマルコとパルバラの夫婦。 彼女は危機を乗り越えようと努力をするが... 「よそ見して」婦人警官のオルネッラは、夫の浮気に気づき家を飛び出すが... 「棄てられて」妻に家出されたゴッフレード。 彼が本屋で手にしたのは、CD付の恋愛マニュアル本。 さっそく実行するべく、ある女性にアタックし始めるが... はっきり言ってこの映画の恋愛感がわからない。 「恋愛を謳歌している」というイメージがあるイタリア人ですけど、 恋多き分、悩みも多い。 本作は、年齢も仕事も境遇も異なる人々が愛に悩み、傷つき、 そして喜びを知っていく4つのショート・ストーリーということなのですが.... とにかく相手のことより自分の想いを主張させなくてはっ!の行動に一生懸命で 余計に混乱しつつも、割と相手も大らかというか、 明らかに犯罪だろう〜と思うようなアプローチも受けてしまう、 かといって、ここは受けておくところだろう〜というところは、 バシッと突っぱねるみたいな。 ちょっと良いなと思うところもありますが、 割といろんな外国作品を観てきた中でここまで自分とズレていたものは、 初めてでしたので、かなり衝撃を受けてつつ、 忘却の彼方へと見送るのでした。
2010/07/19 Category : ア行 The Secret Life of Words 2005 イザベル・コイシェ監督作品「あなたになら言える秘密のこと」について イギリスのとある街にある工場で働くハンナは、 働き者ではあるが誰とも口を利かず、孤独な毎日を送っていた。 彼女の過去は誰も知らない。 時々どこかに電話をかけるが、相手が出ても何も話さずに切ってしまう。 全く休まないハンナを見た上司は、彼女に無理にでも休暇を取るように勧め、 ハンナはある港町にやって来る。 しかし休暇など欲しくなかった彼女はとりたててすることもない。 そんな時に入った中華料理屋で、至急看護婦が欲しいと携帯で話す男を見かけ、 ハンナは自分は看護婦だと告げる。 ある油田掘削所で火事が起こり、 重傷を負った男性を看護する人が必要だという。 ハンナはすぐにヘリコプターで採掘所に向かう。 患者のジョゼフは重度の火傷を負っており、 更に火事のせいで一時的に目が見えなくなっていた。 ジョゼフは彼を殺そうとした男を助けて重傷を負ったとハンナは聞かされる。 ハンナは黙々とジョゼフを看護する。 ジョゼフは時には強引に、時には冗談を交えて 何とかハンナ自身のことを聞き出そうとする。 そんなジョゼフや、採掘所で働く心優しいコックのサイモンに、 徐々にハンナは心を開いていく.... ああ、なんとこの監督の登場人物に対して愛情があることか。 特にこの映画については、そう感じずには終えません。 そして、観ている人たちにメッセージを投げかけつつ、 辛い想いをしてきた者達に祝福のハッピーエンド。 良かったの一言に尽き、こちらとしては安堵の眠りにつくのです。 それにしても、ハンナのカウンセラーの言葉でもわかるように、 戦争の傷痕は受けた本人にしか伝えられない。 ナチスの行った虐殺さえも風化してしまうのが現実であり、 人間は悲惨な事実を忘れてしまうものなのです。 当の被害者は生き残ったことさえ恥だと感じるくらい心に傷を負っている。 そんな彼らに話をしてもらうのはとても残酷なのはわかっている。 日本においても(実際、本当に起こった事実なのかは別においといて)、 南京大虐殺の事実や慰安婦問題を消し去ろうとする勢力があるけど、 戦後生まれの人間に歴史を否定されても説得力がない。 かといって、被害者・加害者ともに口を閉ざしてしまっているのだから、 水掛け論になるのも当然なのかもしれない。 それでも、向き合って語り継ぐことの必要性があるのは確かだなということを、 そして今だ世界の至る所で行われてる戦争に対して、 真実の目を持つことを、 ....とても考えさせられてしまうのでした。