2010/07/20 Category : ペドロ・アルモドバル ATAME! 1990 ペドロ・アルモドバル監督作品の「アタメ 〜私を縛って」について 様々なタブーに触れる題材をエキセントリックかつ色彩豊かな手法で映像化し、 世界的な映画作家になったスペインの鬼才、ペドロ・アルモドバルが描く エロティックでエネルギッシュな「純愛映画」。 精神病院を出たばかりの23歳の絶倫青年・リッキー。 これからは普通人として生きていこうと結婚を決意する。 そこで彼が目をつけたのは、かつて病院を脱走した時、 一夜を共にしたことのある元娼婦のポルノ女優・マリーナだった。 しかし、その求愛は彼女に何の断わりもない一方的なもので、 勝手に仕事場やアパートに乗り込んできたリッキーにマリーナは怒るが、 (ストーカーされたんだもの、当たり前の反応ですよね) たちまちベッドに縛りつけられてしまう。 (プロの緊縛師が怒りそうな縛り方) 最初は単なる被害者だったマリーナだが、 外出する時には相変わらず彼女を縛るものの、 それ以外は意外と優しく、性的関係も強要しないリッキーに しだいに奇妙な愛情を覚え、 そして彼が彼女のためにドラッグの売人と戦って傷ついて帰ってきた時、 (ドラッグの売人としては彼にドラッグを強奪されたので、その仕返し) ついに彼の前に身を投げ出し、その愛を受け入れる決意をする。 こうして2人の間に至福の時間が訪れるが、それも束の間、 行方不明になったマリーナを探しに来た姉が彼女を連れ出してしまう。 マリーナを失なって生まれ故郷の村へ戻り、茫然と佇むリッキー。 しかしそこへ自らの愛を告げたマリーナが姉と共に家族として迎えに来る。 3人を乗せた車は一路マドリッドでの新生活へと向かうのだった。 こういった性的な監禁事件がある現状、 ちょっと求愛の仕方には納得がいかないけど、 リッキー扮するアントニオ・バンデラスがすごく可愛いし、 なんせ床上手な上に絶倫だし、 私が彼女だったら、同じく、まぁいいかって感じになりそう。 ただ、「ストックホルム症候群」って言えばその通りなのかもしれないけど、 それだけでは片付けられない特殊な愛の形なのかもしれませんね。 あとマリーナの初主演となったB級ホラー映画の悪役が やたらマッチョな肉体をさらけ出したり、 その映画でのクライマックスでマリーナがバルコニーから雨風晒しながら ブランブランと宙吊りになる姿とか、 内容の割に全く緊張感がなく、逆に笑えるからか、 この衝撃を超えたハッピーなエンディングに繋がるのに無理はないかな〜 あくまで私個人としてはですが。 PR
2010/07/20 Category : ペドロ・アルモドバル Live Flesh/Carne trémula 1997 ペドロ・アルモドバル監督作品の「ライブ・フレッシュ」について 主人公が女性だと実に「人生讃歌」よろしく、とても素晴らしいのですが、 「トーク・トゥ・ハー」とか「アクメ」とか「欲望の法則」とか、 そしてこの物語のように、(ゲイも含めた)男が主人公だと、 割ととんでもないことをしでかしているにも関わらず、 逆に救われてハッピーエンドと、 無垢とはいえ程がある!ってのを 大目に見ている感じがして釈然としないのですが、 「まあ、いいのかな」ってさせる何かは、 この監督の魅力なのでしょうか。 この物語は、 ナンパして一度誘いに乗ったラリった女の子にはまった 青年・ベクトルが衝動赴くまま、 彼女の家を調べて訪ねて押し入ります。 銃声を聞いて駆けつけてきた警官と揉み合ううちに、彼女を逃がそうとした もうひとりの警官・デイビットを撃ってしまって、下半身不随に。 2年後、デイビットはエレナと結婚し、 パラリンピックで活躍するバスケット選手になってます。 仲睦まじいふたりを、テレビで見た服役中の青年は復讐を誓います。 4年後、出所したベクトルは、彼女が院長を務める孤児院を突き止め、 ボランティアとして働き出す....と、 もの凄いベクトルの存在が怖いはずなのですが、 とてもいいやつに描かれて、なおかつ実に可愛いんです。 最後は彼女がベクトルの性的な魅力に嵌まり、 下半身不随の夫を捨ててしまいます。 ベクトルはさんざん利用した 年上の女性・クララを捨てて(しかも彼を庇って死んでしまう)、 彼女と結ばれハッピーエンドって、うーん実に釈然としないし、 第一、クララ(下の画像の女性)が可哀相過ぎです。 ....でもまあ、これはこれでありかな、ということで。 それにしても主人公・ベクトルに扮したリベルト・ラバル(左)と 下半身不随になるデイビットに扮したハビエル・バルデム(右)が 素敵過ぎます! しかもベクトルの全裸で慌てて家を飛び出す場面は毒ですね、はい。
2010/07/20 Category : ハ行 The Ordinary Man 2005 ヴィンセント・ラノー監督作品「変態男」について ジョルジュは家具店を営むごく普通の男。 帰宅途中、むしゃくしゃしてた衝動により、あるアベックの車を追いかけ、 キレた彼氏を返り討ちにして殺してしまいます。 しかしカップルの女・クリスティーヌを殺すことも逃がすこともできず、 殴って気絶させてから自分の車のトランクに監禁することに。 「俺は優しいから殺さない。でも、ばれると困るから、 お前は俺の車のトランクで生活しなくてはならない」 そんなことを言っても泣き叫んだりするのは当たり前。 騒がれるとすぐにばれるということで、叫べないよう、薬で眠らせてから、 鼻から細い木の枝を差し込んでいき、声帯を潰す素人手術をします。 ちなみにジョシュは、妻との仲がうまく行っておらず、 なんと、その妻はジョシュの友人で警官のシモンと浮気中。 そんなこんなで、 クリスティーヌはトランク監禁生活を始めることになります。 食事や布団を用意してあげたり、 本を読めるように電気をつけてあげたり、 そして家族が家を出払っている隙にシャワーを浴びせたりと、 世話するジョルジュと彼女の間に生まれる、不思議な関係。 そんなこんなで1ヶ月過ぎて、クリスティーヌの捜索願が出されます。 普通だったらこの異常な事態、 精神的におかしくなって衰弱していくのですが、 いつの間にか、彼やトランク生活に安心感をおぼえるクリスティーヌ。 実は殺された彼氏は完全なDVで、 酷い暴力を日常的に受けてたことがわかります。 声帯を潰され、トランクで監禁されていることを除けば、 ジョシュは暴力を振るうことは無いですし、逆に世話をしてくれるから。 一方、ジョシュは今更ながらも罪悪感を感じ始め、 殺した彼氏がゾンビになって現れる幻覚を目にするようになり、 より狂しくなります。 ある日、トランク監禁生活をすっかり満喫しているクリスティーヌが、 ジョシュの幼い娘に見つかり、「黙ってろ、しゃべったら殺すぞ」と 娘を脅迫するジョシュ。 ここで、唐突にゲイの刑事カップルが捜索するべく登場。 暖炉の前でマッチョな兄貴分と綺麗系の青年刑事がシャンペンをすすり、 全裸で絡み合いながら、事件捜査の話を楽しげに会話します。 そして、冬のめっきりと冷え込んだある夜、 その日、ジョシュはクリスティーヌのことをすっかり忘れてて、 翌朝、思い出したので慌ててトランクを開けると、 クリスティーヌは凍死寸前に。 急いで家に連れて帰って、 妻が居るにも関わらず、熱いお風呂に入れ、助けました。 今までも仲が悪かったし、 今回の件で妻に三行半を突きつけられた格好になり、 どっかに姿を消すことにします。 「警察には言うな」と念を押すことは忘れません。 ある日、家に戻ると、妻が電話をしてた形跡を発見。 実はその妻は、浮気相手のシモンと電話してたんですが、 警察に連絡したと勘違いしたジョシュは、問答無用で妻を撃ち殺します。 なんと、そのままその足で、娘も撃ち殺すことに。 クリスティーヌは連れて逃げます。 その後に、シモンが訪ねてきて死体を発見、ジョシュを追いかけます。 シモンは追いついた後、ジョシュの妻の仇を討とうと、 ジョシュを撃ちます。 肩に当っただけだったので、死にはしませんでした。 そこで何でか、クリスティーヌがジョシュを助けるため、 車に備えつけてあった猟銃でシモンを撃ち殺します。 それから、トランクから荷物を引っ張り出し、 シモンのパトカーのトランクに移し変えて、その中に入ります。 警察が来た時には、シモンに監禁されたクリスティーヌを、 ジョシュが助けようとして重傷を負ったという形になってました。 ゲイの刑事カップルがヨーロッパらしいフランクさで、 これは嫉妬に狂った間男のシモンが次々と凶行しまくったに違いないと断言、 これにて一件落着!ということで、 クリスティーヌ捜索の件とジョシュ家族皆殺しの件を落ち着かせます。 それから、ジョシュとクリスティーヌは仲良くバカンスに出かけます。 移動はもちろん、クリスティーヌはトランクで。 なんとも理不尽、妻はともかく娘を殺しておいて、 このハッピーエンドはどうよっ! と、かなり納得がいかない、つっこみどころ満載ですが、 ヨーロッパでは有りなのかなと、文化の違いを堪能した作品でした。 とにかく、これって別に普通じゃない?と思わなかった自分で良かったです。 あとこの邦題の「変態男」というタイトル。 これは同じ時期に話題になった映画「変態村」にちなんだのでしょうけど、 明らかに失敗なのでは.... 私なら「電波男」とつけるかな。