2010/07/30 Category : 日本映画 Gohatto/Taboo 1999 大島渚監督作品「御法度」について 1865年、京都。 新選組は新たに隊士を募集した。 多くの志願者が集まる中、一際異彩を放つ美少年がいた。 加納惣三郎と名乗るその青年は、新選組きっての剣豪・沖田総司をも 手こずらせる程の剣の腕の持ち主だった。 そして、もう1人、加納と双璧をなす程の剣の腕の持ち主・田代彪蔵の2人が、 その剣の腕を認められ、入隊を許可された。 しかし、この2人の入隊によって 新選組内部の空気は少しずつ変わっていくことになる。 田代は衆道(男色)の気を持つ男であり、 惣三郎を衆道に引きずり込もうとしていた。 隊士の中にも、美男である惣三郎に言い寄る者が現れるなど、 隊内の秩序を重んじる土方を悩ませる噂が流れた。 そんな中、惣三郎に密かに想いを寄せていた隊士・湯沢藤次郎が 何者かによって惨殺される。 土方は湯沢の恋敵であった人間が斬ったのではないかと疑い始める.... 「死」にこだわるのは誰しも若かりし頃に一度は経験するものと思いますが、 現代でありがちな若者像になんとなくシンクロするように設定された この主人公の加納惣三郎さんはレベルが違う。 いまいち生きている実感が湧かない、今日この頃な日々の連続。 そんな退屈から一転、「新撰組」という組織で偶然見つけた刺激剤、それは.... 殺す、もしくは死に追いやる。 その時代の「衆道」の文化が割と主人公を中心にクローズアップされてますが、 彼にとって男と寝るのはあくまで手段。 生まれもっての魔性を餌に、魅了された者たちを次々と巻き込んでは道具とし、 より満たす故の犠牲とさせ、終にはそのものの塊になってしまう。 彼の思惑は単純。 話を複雑にしているのは、巻き込まれた男たちの妙な愛情だろう。 最後の立ち合い中、 「もろともに....」の一言で斬られた同期でメロメロな田代彪蔵さん。 「雨月物語〜菊花の約」を引き合いにして、 頻りに同性愛疑惑を打ち消そうとする沖田総司さん。 最後に自己去勢するかのように満開の桜の木を叩き切る土方歳三さん。 その他大勢。 この物語の男たちは主人公以外、真面目すぎて恋愛に不器用で 実に可愛いなと思ってしまうのですが、 昔の武士たる者ってこんな感じだったのでしょうか? 個人的には、話が面白いので「愛のコリーダ」の様な 大島監督特有の演出で、配役はもっと緊張感ありの重みのある ゴツくて可愛い部類の俳優で構成していただけたら 随分と良い意味で、凄い好きな映画となってたと思うのですが〜 あとこの映画音楽、 坂本龍一氏のメインテーマが、もう闇に吸い込まれていきそうで、 素晴らし過ぎて鳥肌が立ちました.... PR
2010/07/30 Category : ウォン・カーウァイ My Blueberry Nights 2007 ウォン・カーウァイ監督作品「マイ・ブルーベリー・ナイツ」について 恋人に捨てられたエリザベスは彼のことが忘れられず、 彼の行きつけのカフェに乗り込む。 そんな彼女を慰めてくれたのは、カフェのオーナー・ジェレミーと、 甘酸っぱいブルーベリー・パイ。 それからのエリザベスは、夜更けにジェレミーと 売れ残りのパイを食べるのが日課になる。 しかしそんなある日、彼女は突然ニューヨークから姿を消す。 恋人への思いを断ち切れずにいたエリザベスは、 あてのない旅へと旅立ったのだった..... 自分本位に突っ走ってきて、あるきっかけにより、 自分以外を気にする方向に変わる瞬間。 それから自分はどこかに引っ込ませて、 その場に相応しい人格を作り出す。 そのまま暫く、ビックリするくらい他を観察しながら、人に気を使い、 自分に重ねる。 結局、観察しているところは自分の中にある部分であることに気がつく。 そして独自で修正してまた、走り出す、その繰り返し。 これが頭の中でそれを自己完結できるならどんなに楽だろうかと思うけど、 いや、もの凄く空しくなりそう。 この主人公同様、それを直接回り道をして行動してこそだろう。 それがどんなに面倒で面白いか、なにがともあれ、 改めての生きていることの実感をして次に進める羨ましさ。 私も彼女みたくなってステップ踏みたい、ではなくて直接、行動で。
2010/07/28 Category : デヴィッド・フィンチャー Fight Club 1999 デヴィッド・フィンチャー監督作品「ファイト・クラブ」について 主人公の彼は保険会社に勤めるヤング・エグゼクティブ。 ここ数カ月は不眠症に悩み、さまざまな病気を抱える人々が集まる 「支援の会」に通い始め、そこで泣くことに快感を覚えるように。 そこで「支援の会」中毒の変な女・マーラに出会い、 電話番号を交換する。 出張先の飛行機で彼はマッチョでセクシーなタイラーと知り合う。 フライトから帰ってくるとなぜかアパートの部屋は爆破されており、 彼は仕方なくタイラーの家に泊めてもらうが、 タイラーは自分を力いっぱい殴れという。 タイラーはエステサロンのゴミ箱から人間の脂肪を盗み出し、 石鹸を作って売っていた。 数日後、彼とタイラーは再び酒場の駐車場で殴り合う。 次第に見物人は増え、 ついにタイラーは酒場の地下室を借りて互いに殴り合う 「ファイトクラブ」の設立を宣言する。 一方でタイラーはマーラを呼び出し、情熱的なハードセックスを繰り返す。 「ファイトクラブ」は会員が増え、全国に支部ができるまでになった。 ついにクラブは、いたずらとテロを組織的に繰り返すようになる。 タイラーはその延長線でクレジット会社のビルを爆破する計画を立てる。 彼はタイラーを阻止しようと走り回るが、なんと意外な事実が発覚。 なんとタイラーは彼のもうひとつの人格だったのだ。 かくしてタイラーは彼を凌駕しようとするがそれは阻止され、 彼は駆けつけたマーラと共に 美しく崩れ落ちるビル群を眺めるのだった。 消費欲や虚栄心を刺激する情報が飛び交うこのご時世。 「高度消費社会」という名の集合体化された悪霊の念波動によって、 我々は次々と去勢されて、生きる力を失い続けている。 それに対抗するべく形成された「ファイト・クラブ」。 信条、お互いを殴らせ合うこと。 方向性は他者には向かない「自己破壊」であり、 「暴力」では決して、ない。 与えられた痛みによって自己を相対化できる。 そんなことでマッチョさを取りもどそうと足掻く若い男たち。 その戦いがどんどんエスカレートして、 自己滅却から文明社会を崩壊させる テロへの志向へと転がり落ちてゆくのと同時に 主人公の分裂していた2つの人格が 1つになるまでの過程を描いている物語。 ストレートすぎてどうかとはじめは思ってましたが、 確かに、ここまで極端にならずにしろ、必要なのかな〜と、 あと、ラストのあれほど自己への直面化を拒否していた主人公が、 自分を見つめなおして、 自らの自我をコントロールしようとし始める瞬間、 その時の精悍な顔つきは実に惚れ惚れする。 死に際でというのがとても切ないが、 光輝くほどの充実さが伝わってくる。