2010/08/06 Category : ペドロ・アルモドバル KIKA 1993 ペドロ・アルモドバル監督作品「キカ」について 愛憎うずまくミステリー・サスペンス劇となってるみたいですが、 ぜんぜん。 「人の道にははずれているけれど それぞれの理屈にはかなった行動をとる人々の群像劇」ってことで、 面白いこの監督ならではって感じです。 メイクアップ・アーティストのキカは、仕事を通して アメリカ人の作家・ニコラスに出会い、関係を持ち始める。 彼の妻は数年前に自殺し、 彼は彼女の残した大きな家で義理の息子・ラモンと暮らしていた。 キカはその後、 年下でハンサムな人気カメラマンであるラモンと同棲し始めるが、 南米の放浪の旅から再びスペインに戻ってきた ニコラスとも秘かに密会を行っていた。 ある晩、メイドのフアナは、 スキャンダルをスクープする話題のTV番組「今日の最悪事件」を見ていた。 女性レポーターのアンドレアは常に奇抜な服装で 頭にカメラを設置して町中を駆け回る。 彼女はラモンが母の自殺を苦にしていた時の元担当精神分析医兼恋人で、 彼に振られたことを未だに憎んでいた。 そんなある日、 そのTV番組でも話題にしていた元ポルノ男優で強姦魔・ポールが 姉であるフアナに会いに来て、キカをレイプしてしまう。 アンドレアは、それをスクープし、 倒錯的な性嗜好のラモンまで助けるどころか うっとりと遠くからその現場を見ていたことを知ったキカは、 悲しみに暮れ彼の元を去ることに。 その事件をきっかけに殺人者としてのニコラスの姿が浮き彫りにされていく。 アンドレアは必死で真実を言わせようとニコラスと血みどろの戦いになり、 結局2人とも息絶えてしまう。 キカはあまりに衝撃的なことの連続で動揺はみせながらも、 ラモンから完全に踏ん切り、 新しい人生に向けて歩んでいく...... 「自殺」という形で妻を失った 作家・ニコラス(別の愛人はドラァグ・クイーン)。 母の自殺の原因を義父・ニコラスにあると疑う 息子・ラモン(覗き魔趣味のイケメン)。 その父と息子の両方と肉体関係を持つ メーキャップ・アーティストのキカ(超マシンガントーク)。 過激な事件専門の番組司会者アンドレア(衣装がゴルチエ、素晴らしい!!)。 元ポルノ男優で脱獄囚のポール(絶倫のイケメン)。 その脱獄を手助けする レズビアンの姉フアナ(キカの家政婦かつ弟の性衝動抑え役)。 こんな登場人物が絡み合うのだから、 もう話の展開が奇行に満ちてて倫理観無し。 まぶしいほどの赤を基調とした色彩感覚。 特異で奇怪でありながら不快ではない雰囲気。 「素晴らしい」の一言です。 私も割と変わり者呼ばわりされますが、 比べるとまだまだって感じなので、頑張ります。 PR
2010/08/06 Category : タ行 Waiting to Exhale 1995 テリー・マクミラン原作の映画「ため息つかせて」について サヴァンナはTVプロデューサーとしての成功と 理想の男性を射止める夢を実現するため、 大晦日にデンバーから親友・バーナディンのいるフェニックスに引っ越してきた。 その日、バーナディンは11年間連れ添った夫のジョンから、 彼の経営する会社の経理担当の白人女性と暮らしたいので 離婚したいと告げられ、 ショックと怒りで彼のBMWに火をつけ、 所持品全てを1ドル均一で売り払ってしまう。 彼女はヘアサロンを経営している古くからの友人・グロリアに、 サヴァンナを紹介する。 グロリアは大学時代にスポーツマンのデイヴィッドと関係し、妊娠。 その時生まれた息子・タリクは今17歳の反抗期で、心配の種だ。 自分の体重が増えたのも気掛かりだが、デイヴィッドから 「何年もバイ・セクシャルだった。今は完全なゲイだ」と衝撃の告白をされ、 いつか一緒に暮らしたいという夢も消える。 彼女たちにはもう1人の親友・ロビンがいて、 サヴァンナもすぐに親しくなった。 保健会社に勤める彼女は経済的にも自立し、美人で男にもモテるが、 ハンサムなら簡単に飛びつくので苦労が絶えない。 現在の恋人・ラッセルは他の女性と結婚してしまい、 ルックスでは選んではダメ!と同じ会社のおデブなマイケルと交際を始めるが、 やっぱりラッセルが忘れられない。 一方、サヴァンナはかつての恋人・ケネスと再会し、ベッドを共にする。 彼は妻との離婚を考えているというものの、一向にその気配がないため、 男のズルさを感じる。 離婚訴訟中のバーナディンは、ある日、ジェームズという男性と出会い、 互いの悩みや不安を語り合ううち、特別な一夜を過ごす。 彼は、妻とは離婚寸前だったが、 今はガンで余命いくばくもない彼女を看取るだけだと言う。 妻の元へ帰る彼を見送りながら、 彼女はもう二度と会うこともないと思う。 グロリアは隣家に引っ越して来たマーヴィンと親しくなり、 彼との第二の人生を考え始める。 ロビンはラッセルの子を妊娠するが、 彼との訣別を選んで子供を育てようとする。 サヴァンナもケネスの優柔不断な態度に腹を立て、彼と完全に別れる。 そんなある日、グロリアが心臓発作を起こし病院に運ばれ、 昏睡状態の彼女の傍でマーヴィンとタリクは祈りを捧げた。 また大晦日がやって来た。 グロリアはすっかり快復し、ロビンは大きなお腹を抱えている。 バーナディンは離婚訴訟に勝った。そしてサヴァンナは自立した。 それぞれが、かけがいのない友情を確かめ、 それまでの日々を思い返しホッとため息をつくのだった。 最近「SEX AND THE CITY」が映画化されて話題になってます。 素敵なキャリア、最新ファッション、そして男とセックス。 それらを全部ひっくるめたスタイル全集という感じで、 この女性4人にあまり「人間」を感じないせいか、全てが薄っぺらの様。 それでも私たちクールでしょ? みたいな開き直って頭の良い生き方見せられたところで 今イチ、ピンとこないし、 彼女たちの友情は確実に信用できない。 それに対してこの映画の女性4人は、 等身大女性の抱えそうな問題を持ちつつも、 前向きに自分のスタイルは崩さない、むしろ強気に通して生きていきます。 だから何? 私たちクールでしょ? さすがに「男よりも友情」っていうのは極論だろうと、しかし、 それもありかな? とも思わせる彼女たちの十分な説得力と この清々しいまでの女っぷりは、 観ているこっちも元気にさせてくれます。 ちなみにこの映画のサントラは、 BABYFACEが全曲プロデュースしています。 90年代代表のR&B女性ボーカルたちがゴージャスに参加していて、 内容はもー素晴らしいに尽きます。
2010/08/05 Category : リュック・ベッソン Lune Froide 1991 リュック・ベッソン制作 パトリック・ブシテー監督作品「つめたく冷えた月」について チャールズ・ブコウスキーの短編は全て読んでしまった。 女を買ったとか、酔っぱらって倒れたとか、 酒のために日雇いやって妄想に耽ったとか、 好きというとそうでもない、ほとんどがどうしようもない男の日常話。 その中2つを1つにしたお話「つめたく冷えた月」。 モノクロの映像美とは裏腹に、 俗悪な雰囲気の町で昼間に酔いどれた汚い中年男2人組の物語。 デデとシモンはともに40歳になろうとしているのに、 いまだに不良少年のような生活を送っている。 定職にも就かず妹夫婦の家に転がり込み、 ジミ・ヘンのギターとアメリカにいかれている脳天気なデデ。 夜勤の職にこそ就いているが、 昼間はデデとつるんで酔っぱらっている寡黙で内気なシモン。 2人の性格は正反対だが、なぜかうまがあう。 酔っぱらい、女をからかい、ケンカをし、 娼婦と抱き合う馬鹿騒ぎの毎日に、 シモンは小さな不安を覚える。 実は彼らには人に言えない秘密があった.... 彼らにはある夜、病院から若い女の死体を盗み、 交代で死姦をしたという過去があった。 シモンは哀れで美しい死体に恋してしまう。 彼らは月光の輝く海に死体を運び、シモンは彼女を抱えて波間に流す。 一瞬、彼には人魚になった彼女が見えた気がした。 いわれなくとも大人の世界は分かりきっている、切実にね。 しかしだね、ちゃんと家庭を持ったり、 良い老後を過ごすために無理して働いたり、 いずれは離れていく子供を育てるなんてことが、 俺たちの「人生」としてまかり通ってよいものだろうか。 だからといって、こう毎日、酔いどれてる俺たちも俺たちだが、 何か違う気がするんだな、これが。 陽気に振る舞ってる2人の、 そんな喘ぎの様なものが時より聞こえてくるかの様。 拾った美しい女の死体と関係して、1人がそのモノに恋をする。 そして海に捨てる場面は一変して、美しい神聖な雰囲気に変わる。 1人はそのまま俗悪な人生を、 恋をしたもう1人は神聖な世界へと旅立ちそうな、 ......おそらく死ぬのかな、 そんな気に感じる私もある意味同じなのかも。