2012/04/23 Category : ラ行 Luisa 2010 ゴンサロ・カルサーダ監督作品「ルイーサ」について アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスにて。 遠い昔、夫と娘が事故で亡くなって以来、その悲しみに自ら虜となり、 人生を死んだ様に生きてきた彼女にとって、 毎日のリズムを狂わせる他人との関わりは一切避けてきた60歳のルイーサ。 毎朝決まった時間に起床し、 スキのない服装である霊園の電話受付の仕事場に赴き、 定刻に仕事を終えると、もう1つのある女優の家政婦の仕事をし、家に帰る。 そんな規則正しい毎日を送り、生計を立ててきた彼女。 ある日、唯一の愛する家族であった飼い猫が亡くなった日に 2つの職を同時に失ってしまう。 30年も勤めた霊園から退職金が一切出ず、 貯金もない彼女は、猫の火葬費用を作るために 地下鉄で物乞いを始めることに。 しかし、厳しい世の中、全てが初めての彼女には至難の業であり、 日々の糧にも事欠き、アパートの電気も止められる。 地下鉄で出会ったオラシオという物乞いをする隻脚の男や 住人である彼女を温かく見守っているアパートの管理人・ホセが物申すも、 "私1人で出来ます!" と言わんばかりに、 始めは意地を張って一向に耳を貸さない態度を取ってしまうものの、 こうもドン底までに陥ってしまうと、 もう1人ではやっていけないことを悟る彼女。 少しづつ彼らに心を開き、恥ずかしいと思っていた "人の善意に頼る" ことで、 少しだけ運が上向きになり、再生の兆しが見えてくるのだった。 それにしても、この映画のヒロイン・ルイーサの 悲惨な目に遭いっぷりは容赦なくて、 でも現実にこういった人たちが増えているだけあって 心苦しくなる....と思いきや、 必死にお金を稼ぐために奮闘する姿が滑稽でとても愛らしいので、 思わず応援したくなって、いつの間にか私も頑張って前向きにいこうと、 逆に励まされているという、不思議な魅力がある物語でした。 彼女を善意で取り巻く人たちもみんな必死に生きているからこそ、 彼女に共感し、分かち合えたのでしょう。 それでもこの厳しい世の中、まだ第一歩を進めただけの彼女にとって 不安は大いにあると思いますが、何となく彼女は大丈夫に感じれるのは、 同じ庶民である私たちにとっても大変嬉しいことだと思います。 なにより、こんな残酷な現実を巧みな演技や演出でコミカルに描いてみせた この映画の凄さは観ないと分かりません。 何があっても暗くならずに前向きに人生を謳歌しようという 朗らかさを称えたい。 そんなお勧めの映画です。 PR