2010/08/05 Category : ウォン・カーウァイ Chungking Express 1994 ウォン・カーウァイ監督作品「恋する惑星」について 刑事223号は、雑踏の中で金髪にサングラスの女とすれちがう。 「そのとき、彼女との距離は0.5ミリ-57 時間後、僕は彼女に恋をした」 女は無国籍地帯、重慶マンションを拠点に活動するドラッグ・ディーラーで、 密入国したインド人に麻薬を運ばせる仕事を請け負っている。 刑事223号はエイプリル・フールに失恋。 恋人が忘れられず、ふられた日からちょうど1か月後の自分の誕生日まで パイナップルの缶詰を買い続けてしまう。 金髪の女は啓徳空港へ。 しかし、麻薬を渡したインド人の姿はなく、彼女は裏切りを知る。 ほどなく命を狙われた彼女は相手を銃殺し、走り逃れる。 かくして刑事223号と金髪の女は偶然入ったバーで知り合う。 恋人を忘れるため、その夜会った女に恋しようと決めている刑事223号。 疲れ切った女はそんな彼にそっけない。 2人はホテルに泊るが、女はすぐに眠り込み、 刑事223号は彼女のハイヒールをそっと脱がせて洗ってやる。 静かな一夜が明け、25歳の誕生日の朝、 刑事223号はグラウンドを全力疾走。 わざと置き捨てて去ろうとしたポケベルが鳴る。 それは金髪の女からのバースデイ・コールだった。 その朝、女は裏切った男を射殺、 金髪のかつらとサングラスを投げ捨て、去っていく。 刑事223号は小食店「ミッドナイト・エクスプレス」で、 新入りの娘・フェイとすれちがう。 「そのとき、彼女との距離は0.1ミリ ....6時間後、彼女は別の男に恋をした」 刑事633号は店の常連。 彼にはスチュワーデスの恋人がいたが、2人には別れが待っていた。 ある日、フェイはスチュワーデスが刑事633号にあてた手紙を 店主からことづけられる。 手紙には彼の部屋の鍵が入っていた。 刑事633号の部屋に忍び込むフェイ。 それからというもの、彼女は口実を見つけては店を抜け出し、 彼の部屋を少しずつ自分好みに模様替えしていく。 刑事633号は、恋人がいなくなった部屋が、 悲しくて変質しているのかとひとりごちる。 やがて2人は部屋で鉢合わせ。 フェイが置いていった「夢のカリフォルニア」のCDを聞きながら、 お互い何事もなく眠りにおちる。 しかし2度目の時、彼女は逃げてしまう。 店を訪れた刑事633号は彼女をデートに誘う。 大雨の夜、約束の時間、 待ち合わせの店「カリフォルニア」に彼女は来ない。 待ち疲れた彼に店主がフェイからの手紙を渡す。 一度は捨てたが、 拾い上げてみると中身は日付が一年後の塔乗券。 行き先は雨でにじんで読めなくなっていた。 彼女は「夢のカリフォルニア」に旅立ったのだ。 1年後。スチュワーデス姿のフェイは ミッドナイト・エクスプレスの前にいる。 流れてくる「夢のカリフォルニア」のメロディ。 店の主人は刑事633号だった。 彼はあの塔乗券を差し出し、行き先を教えてくれという。 フェイは新しい塔乗券と取り替えてあげると答え、 かたわらの紙ナプキンをとりあげた。 観るたびに味が出てくる素敵な映画。 これほど観る人によって感じ方が変わる映画も珍しいと思います。 香港の雑踏の中、2つの恋の物語。 恋をしている人って傍目で見ていると、 なんとも間抜けな感じですけど、可愛いですね。 トレンディードラマとか昔の大映ドラマみたいな韓国モノの類いを見ていると、 独特の性的な生臭さがあった上に軽いから、 とたんにドロドロしてきてウザくなる。 その瀬戸際、まででしょうか。 感動できる他人の恋愛物語って。 PR
2010/07/30 Category : ウォン・カーウァイ My Blueberry Nights 2007 ウォン・カーウァイ監督作品「マイ・ブルーベリー・ナイツ」について 恋人に捨てられたエリザベスは彼のことが忘れられず、 彼の行きつけのカフェに乗り込む。 そんな彼女を慰めてくれたのは、カフェのオーナー・ジェレミーと、 甘酸っぱいブルーベリー・パイ。 それからのエリザベスは、夜更けにジェレミーと 売れ残りのパイを食べるのが日課になる。 しかしそんなある日、彼女は突然ニューヨークから姿を消す。 恋人への思いを断ち切れずにいたエリザベスは、 あてのない旅へと旅立ったのだった..... 自分本位に突っ走ってきて、あるきっかけにより、 自分以外を気にする方向に変わる瞬間。 それから自分はどこかに引っ込ませて、 その場に相応しい人格を作り出す。 そのまま暫く、ビックリするくらい他を観察しながら、人に気を使い、 自分に重ねる。 結局、観察しているところは自分の中にある部分であることに気がつく。 そして独自で修正してまた、走り出す、その繰り返し。 これが頭の中でそれを自己完結できるならどんなに楽だろうかと思うけど、 いや、もの凄く空しくなりそう。 この主人公同様、それを直接回り道をして行動してこそだろう。 それがどんなに面倒で面白いか、なにがともあれ、 改めての生きていることの実感をして次に進める羨ましさ。 私も彼女みたくなってステップ踏みたい、ではなくて直接、行動で。
2010/07/19 Category : ウォン・カーウァイ Happy Together/春光乍洩 1997 ウォン・カーウァイ監督作品「ブエノスアイレス」について 香港からちょうど地球の裏側に当たるアルゼンチンを旅するゲイのカップル、 ウィンとファイ。 「やり直す」ための旅行にもかかわらず、 イグアスの滝への道中で道に迷い喧嘩別れしてしまう。 ひとりになったファイは旅費の不足を補うため、 ブエノスアイレスのタンゴバーでドアマンとして働くが、 そこへ白人男性とともにウィンが客として現れる。 以降ウィンは何度もファイに復縁を迫りそのたびファイは突き放すのだが、 嫉妬した愛人に怪我を負わされたウィンが アパートに転がり込んできたことから、 やむなく介護を引き受ける。 ウィンとの生活にファイは安らかな幸せを感じるが、 怪我の癒えたウィンはファイの留守に出歩くようになり、 ファイは独占欲からウィンのパスポートを隠す。 一方、ファイは転職した中華料理店の同僚で 中華民国からの旅行者のチャンと親しくなり、 そんなファイのもとからウィンは去っていく。 旅行資金が貯まったチャンは南米最南端の岬へ行き、 そこで代わりに悩みを捨ててきてあげるからと ファイにテープレコーダーを渡す。 ファイはそれを握りしめるが、言葉はなく、 ただ、涙を流すしかなかった。 チャンの出発後、ファイは稼ぎのいい食肉工場に転職、 旅費が貯まりイグアスの滝へと旅立つ。 香港への帰途、ファイは台北のチャンの実家が営む屋台を訪れた。 店の奥には灯台に立つチャンの写真が...... ファイはこっそりそれを盗み取った。 会いたい時は彼がどこにいてもいつでも会えるのだ、 そう確信した。 もし自分が住んでいる地球の裏側(日本だからブラジル辺り?)に 恋人と旅に出て、旅行中にいろいろあって、 この物語同様、後に別れたとする。 私なら整理をしたいから、真っ先に帰国してしまうが、 そうはしない二人。 知らない土地での嫉妬と欲望、漂流感、そして独り。 傷口をあえて開き、裂けた肉に濃密な空気を接触させる 「切ない」を通り越した痛み。 後々、もの凄い美しい想い出として残りそう。 「恋愛」という人の繋がりに対しての切ないでもどうしようもない、 行き違い、 一緒にいるだけでとても幸福なのに、 より多くのものを求めてしまう性、 別れを決意して、苦しいけど足掻きつつ、 徐々に傷が癒えて再出発するまでの時間、 一方、失って罪悪感と絶望感に苛まれ、 そのままとどまって壊れていく様と。 なんだか、個人的にいろいろなことを思い出してしまって、 とにかく、 終わりなら終わりでウジウジせずに見切りをつけて再出発する、 扮するファイをお手本にしなくてはっ!と 私の恋愛設定モードをリセットするのでした。 それにしても、ファイに扮したトニー・レオンの切ない演技が素晴らしい。 あとウィンに扮したレスリー・チャン。 改めて、惜しい人を亡くしました。