2010/07/19 Category : カ行 Constantine 2005 フランシス・ローレンス監督作品「コンスタンティン」について この世は、天国・人間界・地獄の3つの世界に別けられ、 それぞれの住人は別の世界へと自由に行き来することはできないのが原則。 しかし現実は、天使と人間・悪魔と人間の中性的な存在「ハーフブリード」が 外観上人間と違わぬ姿を以って人間界に住み着いていた。 自己中心的で素行が悪く、現在末期の肺ガンで 余命幾許も無い男・ジョン・コンスタンティンが主人公。 彼は人間以外のものを見ることができる特殊な力を持っており、 人間界で悪事を働くハーフブリードを始末する悪魔祓いを行っている。 しかしこの「人間以外のなにかが見える力」のせいで幼少期に苦しみ、 自殺未遂を起こした過去がある。 キリスト教での自殺は地獄に落ちるとされているため、 悪魔祓いによる善行を積むことによって神の恩赦を獲得し、 死後地獄行きが確定している自身の運命を変えようと画策していた。 しかし天界のハーフブリードであるガブリエルは、 コンスタンティンは悪魔祓いと称して、神から与えられた力を 私欲的に使っているうえ、 肺ガンで死ぬのはそもそも長年の重度な喫煙癖の結果であり、 総じてジョンの思惑は無駄なことであると言い続けていた(....確かに)。 ある日、悪魔祓いを行っていたコンスタンティンは、 少女にとりついた悪魔が人間界へ潜入しようとしたのを目撃する。 互いの領域を侵さないことで成り立ってきた世界の均衛が 崩れ始めようとしていた.... 自殺を試み、2分間だけ地獄をみたことで、 悪魔を見分ける特殊能力を持ったエクソシスト。 天国への切符を手にするために、 日夜、人間界に潜む悪魔を地獄へ送り返すのを続けている。 その体は末期ガンに冒され、余命は1年。 このままでは死んだら地獄に堕ちてしまう。 ある日の悪魔祓いの最中、不穏な空気を感じたエクソシストは、 地上を成立させている、天国と地獄の均衡が崩れかけていることを知る。 それからそれからって感じですが、 天使と悪魔、それぞれ人間のハーフが集うアンダーグラウンドなクラブ。 お洒落な祈祷師のオーナー、酒浸りでガチムチの神父、美しい女刑事、 ハイファッションの悪魔や天使など、キャラクターたちの素晴らしいこと! その中でも麗人の狂天使ガブリエル扮する ティルダ・スウィントンが素敵過ぎで、 そして、あのルシファー。 あの白スーツをさらっと着崩すあの粋っぷりは、もう見事! 45歳過ぎたら、 あんな "Crazy!Sexy!Cool!" ブリブリな感じなりたいな〜と。 本作品について、 ジョン・コンスタンティン(主人公)を演じたキアヌ・リーブス、 「マトリックス」シリーズ以来の「最高の脚本」と絶賛していたそうですが、 あんまり持ち上げるほどでもないような感じもいなや.... PR
2010/07/28 Category : ウォシャウスキー兄弟 The Matrix 三部作 1999-2003 ウォシャウスキー兄弟による映画「マトリックス 3部作」シリーズについて 改めて何度か見返して意味深で謎であったところが解るにつれて、 特にマシン世界側の住人の存在について、 私的には非常に良く出来てるな〜と感心します。 ここからはネタバレだし、かなりマニアックな話になりますが、 デウス・エクス・マキナ(ラストのベビーフェイスな機械のドン)が 牛耳る現実世界。 その機械たちの電池として生かされている人たちがマトリックスの住人で、 アーキテクト(紳士の老人)により、設計から製造、そして制御などを、 純粋な論理に基づき管理している。 それに対してオラクル(予言者でクッキーを焼くおばさん)が、 論理では割り切れない人間(精神)を維持するために、 「偶然(チャンス=不確定性)の結果」に基づき管理。 今回のネオ覚醒により、世界全てが崩壊するのを予見、 でも自分ではどうすることも出来ないので、自由意志を持つ人間に託し、 崩壊を避けて機械と人間の共存する方向で人間に協力する。 サティー(インド人の少女)はプログラム同士が愛し合って生まれた 愛のプログラム。 メロビンジアン(フランス気触れの金持ち男)は、元オラクル。 予見できる今のバージョンアップしたオラクルが存在してから、 上書きされて削除されるのを恐れマトリックスに逃亡、 今はエグザイルのドンに。 セラフ(カンフーの達人でネオよりカッコいい)は 現オラクルの防御システムですが、 メロビンジアンに「放蕩息子」と呼ばれるところから、 元々は彼の身内であり、 もっと遡ると、初めてネオを出会う場面の彼の行いからして、 何代目か前のネオ(救世主)だったと思われ、最後の場面で納得。 さてその最後の場面、 マトリックスにてアーキテクトとオラクルとサティー、 そしてセラフの4人が集まって、 とても人間的に偏って不安定だったこの世界を 今回のネオの奇跡(ウイルス暴走阻止と完全破壊)によって、 とても安定した平和で愛ある世界に作り変えれたことを 喜んで終わるのですが..... 死をもって己の正義を貫く、とても素晴らしいことだと思います。 そして各人が運命づけられて、 それ以上の働きしてサポートをする人たちも素晴らしい。 でも結局のところ、 その世界にとって私たちはわがままこの上なく邪魔な存在。 死をもって機械との交渉を成功させ、 攻撃を止めさせたせっかくのネオの働きも またいずれ、振り出しに戻って次こそは、きっと滅ぶのだろう。 良心と欲深などの汚れを兼ねそろえた人間だもの。 希望を胸に、時に反乱を起こしつつ、 必死にしがみついて足掻いて頑張って生きていく。 そんなものに永遠なんて無い、だからこそ、輝いている。 この物語の人たちはすごく。 現実での風潮として、やたら「エコ」がどうの、 地球温暖化を防ごうだの、 希望を持つ以上に、なんだかキレイごとで済まそうとして、 結局、無関心にさせている。 どうしてその過ちを私達がしてしまったのか、 真っ向から挑まないのだろう? さあ、この危機感を真摯に受け止めてキレイごと一切無し、 この際人間第一で、 私達のための地球を、私達人類を 生きながらえさせていく方法や活動をしようではないかっ! そんな熱く偽善を語ろうものなら、誰からか口を塞がれる。 キレイに生きる。それがモットー。 そう、手を汚してまでやりたくない、面倒臭い、でも未来大丈夫かな。 そうだ、聞かなかったことにしよう。 結局、この何でも出来ちゃうマトリックスの空間なんて出来た日には、 極論、新しいゲームを買うために徹夜で行列してまでみたいな、 殺到、自ら進んでと「地球」なんか放っといて住み始めるんだろうな〜 それにしてもちょっと思ってしまったのですが、 人間側にしたらネオの行いは直接見て理解している人はいないわけで、 利用されて元に戻っただけじゃんって、 私ならザイオンの街を再建しながら愚痴ると思うのですが、 どうなのでしょうか?
2010/07/19 Category : ウォン・カーウァイ Happy Together/春光乍洩 1997 ウォン・カーウァイ監督作品「ブエノスアイレス」について 香港からちょうど地球の裏側に当たるアルゼンチンを旅するゲイのカップル、 ウィンとファイ。 「やり直す」ための旅行にもかかわらず、 イグアスの滝への道中で道に迷い喧嘩別れしてしまう。 ひとりになったファイは旅費の不足を補うため、 ブエノスアイレスのタンゴバーでドアマンとして働くが、 そこへ白人男性とともにウィンが客として現れる。 以降ウィンは何度もファイに復縁を迫りそのたびファイは突き放すのだが、 嫉妬した愛人に怪我を負わされたウィンが アパートに転がり込んできたことから、 やむなく介護を引き受ける。 ウィンとの生活にファイは安らかな幸せを感じるが、 怪我の癒えたウィンはファイの留守に出歩くようになり、 ファイは独占欲からウィンのパスポートを隠す。 一方、ファイは転職した中華料理店の同僚で 中華民国からの旅行者のチャンと親しくなり、 そんなファイのもとからウィンは去っていく。 旅行資金が貯まったチャンは南米最南端の岬へ行き、 そこで代わりに悩みを捨ててきてあげるからと ファイにテープレコーダーを渡す。 ファイはそれを握りしめるが、言葉はなく、 ただ、涙を流すしかなかった。 チャンの出発後、ファイは稼ぎのいい食肉工場に転職、 旅費が貯まりイグアスの滝へと旅立つ。 香港への帰途、ファイは台北のチャンの実家が営む屋台を訪れた。 店の奥には灯台に立つチャンの写真が...... ファイはこっそりそれを盗み取った。 会いたい時は彼がどこにいてもいつでも会えるのだ、 そう確信した。 もし自分が住んでいる地球の裏側(日本だからブラジル辺り?)に 恋人と旅に出て、旅行中にいろいろあって、 この物語同様、後に別れたとする。 私なら整理をしたいから、真っ先に帰国してしまうが、 そうはしない二人。 知らない土地での嫉妬と欲望、漂流感、そして独り。 傷口をあえて開き、裂けた肉に濃密な空気を接触させる 「切ない」を通り越した痛み。 後々、もの凄い美しい想い出として残りそう。 「恋愛」という人の繋がりに対しての切ないでもどうしようもない、 行き違い、 一緒にいるだけでとても幸福なのに、 より多くのものを求めてしまう性、 別れを決意して、苦しいけど足掻きつつ、 徐々に傷が癒えて再出発するまでの時間、 一方、失って罪悪感と絶望感に苛まれ、 そのままとどまって壊れていく様と。 なんだか、個人的にいろいろなことを思い出してしまって、 とにかく、 終わりなら終わりでウジウジせずに見切りをつけて再出発する、 扮するファイをお手本にしなくてはっ!と 私の恋愛設定モードをリセットするのでした。 それにしても、ファイに扮したトニー・レオンの切ない演技が素晴らしい。 あとウィンに扮したレスリー・チャン。 改めて、惜しい人を亡くしました。