2012/03/09 Category : タ行 Clash Of The Titans 2010 ルイ・レテリエ監督作品「タイタンの戦い」について 神々の王・ゼウスを頂点として神々が君臨していた古代ギリシア時代。 ゼウスは人間を創り、彼らからの崇拝と愛を糧に不老不死を保っていた。 そして神々は己の欲望を叶えるためには手段を選ばず、 激しい権力争いを繰り返していた。 結局、それで被害を被るのは人間たち。 なんだかんだ傲慢の限りを尽くす神々に対し、 いつしか人間たちは神への敬意を無くしていた。 一方、ゼウスには人間であるアルゴス前国王の妻・ダナエーを騙して姦通し、 生ませてしまった半神の息子・ペルセウスがいた。 アクリシウスによって ペルセウスは海に母ごと棺に入れられ捨て去られるものの、 ある漁師に助けられ、逞しく育てられる。 ある日、ペルセウスは育ての家族と共にたまたま船で漂っていたところ、 神に対して反旗を翻し、アルゴス国の兵士たちによって ゼウスの石像を打ち壊すのに遭遇。 怒り心頭状態のゼウスが兄である 冥界の王・ハデスを人間界へ解き放したことで、 兵士たちは疎か、彼の家族共々殺されてしまう。 ハデスに復讐を誓ったペルセウスは 残りの兵士たちにアルゴス王国に連行される。 ペルセウスがアルゴス城の王広間に通され、 アルゴス国王・ケフェウスと王妃・カシオペア、 そして王女・アンドロメダを目にした時、 ハデスが現れ曰く、「人間の分際で神々に楯突くなんて上等じゃん! 天罰として10日後の日蝕の日に海の魔物・クラーケンを放って都を滅ぼしてやる。 滅ぼされたくなければ、 そこの神より美しいとぬかしたアンドロメダを生贄に捧げろ!」ということで、 復讐する好機と踏んだペルセウスは王女を救う任務を進んで引き受けた。 命知らずのアルゴスの兵士たちと共に、 危険な冥界への旅に出るペルセウス。 途中で愉快な傭兵2人組、ロボットみたいなジンの魔法使い、 そして彼をずっと見守ってきた曰く付きの女・イーオーが仲間になった。 その行く手には、巨大なスコーピオン、人間の女性の頭を持つ怪鳥ハーピー、 1つの目を共有するグライアイ3姉妹、髪の毛が毒蛇でできたメデューサ、 副ボス・ハデスによって甦ったアクリシウス、 大ボス・巨大なクラーケン、最後にハデスが待ち構えていた。 神の助けを使わずに人間であることをモットーにして戦うペルセウス。 果たして彼は、運命を切り開きアンドロメダを救うことが出来るのだろうか。 本来、ギリシャ神話のペルセウス物語の内容は、 この映画の物語と大きく違っています。 アルゴス王・アクリシオスには娘・ダナエーがいたが、 息子を望んだアクリシオスは使者を使わして神託を求めると、 「息子は生まれず、彼の孫によって殺される」という内容だったため、 娘を監禁。 そこへ神々の王・ゼウスが黄金の雨に身を変えて忍び込んで姦通、 ダナエーはペルセウスを出産した。 これを知ったアクリシオスは我が身を恐れるあまり...... かといって殺すことも出来ず、 2人を箱に閉じこめて川に流してしまった。 漁師に救出されたダナエーとペルセウスの母子はある島で平和に暮らすも、 そこの領主が彼女を恋慕、 邪魔な息子であるペルセウスに 困難なメドゥーサの首を取ってくる旅に行かせる。 父であるゼウスの計らいにより、彼はアテナとヘルメスの助力を受け、 アテナから鏡の楯、ヘルメスから翼のあるサンダル、 そしてハデスから隠れ兜を授かった。 ゴルゴンの妹であるグライアイ3姉妹から メドゥーサの居場所を無理やり聞き出し、 死者の国の洞窟の中にて、メドゥーサの首を取ることに成功する。 メドゥーサの首を袋に入れて、ペガサスで飛行中、 エチオピア王妃・カシオペイアが口にした神への愚弄で 海神・ポセイドンの怒りを買ったことで、 魔物の生け贄とされかけていた王女・アンドロメダを発見。 彼女を救って結婚したポセイドンは島に戻って領主を石にした後、 アルゴスに帰国したが、 このことを伝え聞いたアクリシオスは彼を恐れてアルゴスから逃亡。 よって、彼はアルゴスの王となった。 ある日、ペルセウス王はラーリッサの街でスポーツ競技会に出場。 種目は円盤投げ。 彼が円盤を投げたところ、 円盤が観客の老人に当たってしまい、死なせてしまった。 その老人こそ、前アルゴス王・アクリシオス。 神託は実現することに。 その後、彼は自分が殺してしまった祖父の国土を継承することを恥じ、 他の国土と交換したという。 そして彼は人間として亡くなった後、夜空に昇天し、星座になったとのこと。 ......というあらすじですが、ペルセウスの出生が本来の神話では、 ある意味、奇跡による出産でとてもロマンティックなのに、 この映画では、アルゴス王が神への討伐に出向いたところを見計らって、 ゼウスが王に成り済まして姦通と、実にやり口が性悪で陰険そのもの。 そういった違いが各所にみられて、それが全て映画の方はイヤーな展開。 例えば、妻と不義の息子を崖から落とした後に ゼウスの雷の一撃で醜く化したアクリシオス。 ハデスによってダークサイドに堕ちて暗黒戦士と成り果てますが、 ポセイドンとの一戦で命を落とす寸前で、 呪縛から解かれた彼は父親らしい一言を口にします。 それがとても良い言葉で、 なんだこの人、実は良い人だったんじゃん!って感じ。 あと、旅の仲間(あまり友好が結ばれてるとは思えないけど)が たくさん死んでしまって、 その1人、過去にゼウスの誘いを拒絶して呪いをかけられたイーオーは、 その袖にされたゼウスによって、 勝手に生き返らせてペルセウスの伴侶として与えます。 突如、幾度か現れる父なるゼウスも威厳が全くもって垣間見えず、 何だか散々。 ポセイドンが神(ゼウス)を受け入れられないのが凄く分かります。 これはパラレルワールドの1つなんでしょうけど、 せっかくのアクションかつ、アドベンチャーものなのだから、 もっとスカッ!とした物語を下地にした上での爽快感があったら 凄く良かったのにな〜と思いました。 でも観せる映像は迫力満点でとても素晴らしいし、 登場人物たちもそれぞれが個性的で面白い。 特に、ポセイドン扮するサム・ワーシントンが可愛い過ぎます! 演技はともかく....ですけど、存在があるというだけで こうも魅せられたのは久しぶりです。 あと、ハデス登場のドス黒い煙の様な演出がとても素晴らしく、 私もああ出来たらいいな〜 ということで、見た目重視な視点としてのこの映画はとてもお気に入りです。 次作の「タイタンの逆襲」に期待します。 ところで、この映画のタイトルの "タイタン" って、 オリンポスの神々が生まれる前まで世界を牛耳っていた一族の名前ですけど、 この物語に関連性が無かった様に思えたのですが、いかがでしょうか。 PR
2012/03/05 Category : タ行 DOOM 2006 アンジェイ・バートコウィアク監督作品「DOOM」について 2026年、ネバダ州の砂漠を調査中の考古学者が、 火星にある古代都市への通路(アーク)を発見。 しかし、発見から20年経ってもそれがなぜ作られ、 そしてそれほどの技術を持つ文明が滅びたかは謎のまま。 ある日、火星にあるユニオン宇宙社・オルドゥヴァイ研究所から こんな救護要請が地球のもとに届いた。 「こちらカーマック博士。 極秘研究6627号の披験体が脱出した。至急ここを封鎖しろ!」 施設にいる人数は、職員79人と、事故発生の研究ラボに6人。 危険レベルは “コード・レッド” と実に深刻な状況。 状況把握と安全回復、 場合によっては全てを掃討するという任務に任命されたのは、 カリフォルニア海兵隊特殊作戦本部 "RRTS(緊急対応戦略部隊)" の 精鋭メンバー8人。 リーダーは軍人の鏡というべきカリスマ的存在なサージ軍曹、 チームにはオルドゥヴァイでの作戦要請に顔色を変えたリーパーの他、 デューク、デストロイヤー、マック、ポートマン伍長、ゴート、 そして今回が初任務のキッドが選ばれた。 部隊はネバダ州にあるアーク基地から分子操作装置(アーク)によって 火星へと転送される。 トリップしてオルドゥヴァイに到着した "RRTS" は まず現地のアーク室を封鎖。 そして、地球へは誰も戻れない厳戒態勢を敷く。 ステーション内部は通信員・ピンキーによって遠隔監視され、 事故が発生したラボ内部は、 施設のデータ回復の任務を担当するサマンサが案内役。 その彼女、実はリーパーの双子の姉であり、 かつてこの研究所の事故で亡くなった両親の死をめぐる確執が 2人の間にあった。 だが、今はそんなことはいっていられない。 研究所は3区域に分かれ、 考古学、遺伝子学、武器研究がそれぞれ行われている。 連絡が途絶えたカーマック博士の遺伝子研究棟は他から独立しているため、 部隊は3手に分かれて作戦行動を開始。 隊員たちは極度の緊張感の中、僅かなフラッシュライトの光だけを頼りに、 密閉された通路を進み、各部屋をチェックしていく。 一方、サマンサとリーパーは、 彼女のラボで以前に発掘された2体のミイラを前にしている。 人間の持つ染色体は通常23組だが、 そのミイラには24組が存在する画期的なものだった。 それは知力も体力も人間を超越することを意味し、 しかも人工的に操作された形跡が残っているのだった。 果たして誰が、何のために? 部隊は血だらけの怯えた姿のカーマック博士を発見、 彼は医務室に運ばれる。 さらに通路内には到底人間とは思えない巨大な影が...... ついに部隊のメンバーから犠牲者が出ることに。 始めはゴート、何者かに襲撃されて命を落としてしまう。 リーパーがそれを仕留めるも、それはみたこともないクリーチャー。 一体、この生命体は何処からやって来たのか? 火星の大気で生物は絶対存在できないはず。だとすれば..... この正体不明な奴らは無数にいる可能性が大ということで、 部隊はアークの守備を固め、 見えない敵の完全掃討のために発掘坑へと向かう。 そして次々と現れてはメンバーに襲いかかってくる謎のクリーチャー。 激しい戦闘になるものの、相手が悪過ぎたせいか、 呆気なくマック、デストロイヤー、ポートマンが殺されてしまう。 一方、サマンサは回収したクリーチャーの死体を解剖した結果、 驚愕の事実を目のあたりにする。 さらに残されていたデータには、死刑囚の体に "C24" と呼ばれる 24番目の染色体が移植される染色体異変の人体実験の模様が 克明に記されていたのだ。 ということは、いうまでもないこの正体は人間..... さらに最悪な事態が起こる。 非常線が破られ、アーク室に敵が侵入。 封鎖されたアーク・システムを起動させ、 クリーチャーが地球へと向かってしまったのだ。 奴らを追って地球に戻った部隊が目にしたものは、人々の死体の山。 蠢く多数のクリーチャー。 壮絶な緊迫感の中、狂気の叫びと銃弾が激しく交錯する悪夢の連続。 何はともあれ、存在を脅かす恐怖は、まだ始まったばかり..... ということで、 後に古代文明を築いた生命体が持つ24番目の染色体を移植することで、 破壊衝動やサイコパス的資質を持つ人間の場合は 理性を無くしてしまって凶暴な肉食獣と化し、 病原菌の様に首に噛み付くと相手にも感染するということと、 そうでない真っ当な人間の場合は、 驚異的な身体能力を与えるということが判明。 話が進むに連れ、任務第一主義であるリーダーのサージは徐々に暴走し、 挙げ句の果てには非情な任務に反した部下のキッドを射殺してしまって、 最後は大ボスに。 一方、重症を負ったリーパーにサマンサが 「弟が助かる道はただ1つ」ということで、 例の染色体を移植して、後にスーパーヒーローよろしく甦る。 そして最後はこの2人の男の壮絶な戦い....この展開には驚きました。 この映画は、FPS(一人称シューティング)ゲームの代表作 "DOOM 3" を 下敷きにしているだけあって、 そのゲーム画面を忠実に再現した最後のアクション場面はもう目から鱗。 臨終感が抜群の中、 ヒーローの視点で敵をバッタバッタを倒しまくって進んで行くのが、 とても爽快で実に素晴らしいです。 ただ、"DOOM 3" での敵となる化け物たちは、 アークによって地獄から来てしまった悪魔が主で、 SFと黒魔術的要素がグロテスクにミックスした雰囲気は オカルト好きにはたまらない世界観でしたが、 この映画では遺伝子操作によって 肉体構造などが変化したゾンビ人間ということで、 私としてはゲームに乗っ取った設定だったらもっと良かったなと思いました。 ゾンビ軍曹が最後の大ボスってのは ちょっと、味気ないな〜とはいえ、 ドラマ的には大きな意味があるのでしょうけどね。 それにしてもサージ軍曹扮するザ・ロック。 完璧な筋肉美、人間性を無下にしたかの様な器械人間よろしくのバリバリ軍曹。 もうピッタリと役に嵌まってましたが、 まさか最後、ヒールに堕ちるとは思わなかったです。 ちなみに、冒頭の上半身ヌードの場面、仕事が休みの時はいつも裸なのかな〜と 勝手に深読みしてゲイ的にかなり萌えました。 その彼とはいろいろな面で対照的だった "実はヒーロー" のリーパー扮する カール・アーバンの影ある雰囲気がとてもセクシーで、 飲み込まれてしまったのと同時に、 アメリカのヒーロー像って、やっぱり功績と犠牲なんだなと思いました。
2012/03/04 Category : ペドロ・アルモドバル ¿Qué He Hecho YO Para Merecer Esto!! 1984 ペドロ・アルモドバル監督作品 「グロリアの憂鬱 〜セックスとドラッグと殺人」 マドリードの巨大な団地に住む平凡な主婦・グロリア。 タクシー運転手をしている夫・アントニオと手のかかる2人の息子、 そして義母と暮らしている彼女は、 剣道道場にて掃除婦の仕事ををしながら、家計を支えている。 しかし、生活は苦しくなるばかりで、 次男の歯の矯正のためのお金もない。 夫は彼女の奮闘に理解を示さず暴君の様に振る舞っている毎日。 何の楽しみも無い鬱屈した日常に飽き飽きしていた彼女は、 ある日、仕事先で名も知らぬ男と情事にいたる。 しかし、不倫関係を続ける勇気もなく、 結局は家事に追われるいつもの日常に戻っていくのだった。 一方、アントニオはたまたま客として乗せた老作家から ”ある仕事” の誘いを受ける。 貧しい暮らしから抜け出せる一攫千金のチャンスだったが、 仕事の内容が余りにも胡散臭いもので二の足を踏む。 そんなある日、 ひょんなことからグロリアはこの老作家の家で掃除婦の仕事をすることに。 それからいくつかの展開があるものの、 結局、グロリアは変わらずにそこに居るだけ。 この物語はグロリアを中心に淡々とした日常風景の様に進んでいくのだけど、 その進み方が、この監督ならではの面白い視点でもって、 微妙に観る側の現実感覚とズレて不思議な感じに陥って、 気付くととんでもないことに。 冒頭の剣道道場のシャワー室での情事の場面から、早々とズレていって、 長男は中学生なのにドラックを売っては、お金を貯めているし、 ゲイであるショタコンにはたまらない感じの可愛い次男は 歯の矯正に出かけた歯科医にて、 あまりの貧乏故にグロリアによって、 ロリコン・ゲイの歯科医の養子にされてしまう。 隣に住むクリスタルはグロリアの唯一の親友でしたが、 娼婦で日々男の客との相手で忙しく相手にならない。 階上の主婦の友人は話すと自分のことばかりで、 こちらも話にならないばかりか、 超能力者である娘を虐待しているといった具合。 結局、精神安定剤とはいえ、ドラッグ中毒に。 そして事件が起こります。 普通の様で普通ではない状況に身を置いて共に流れる登場人物の中で、 必死に自分自身を保とうとするグロリアなのですが、 保とうとして、様々に努力したり、 様々に現実に働きかけたりもするのだけど、 そうすることで余計に現実からズレていってしまって、 時には戸惑い、時には開き直りつつ、 それに耐えてしまうものだから、最後はドカーン! ということで、 誰しもこの状況じゃあ、そうなるなー。彼女は本当に良くやってるよって 感じると同時に、 振り返ってみると、現実である日常においての私も こんな風になっているところがあるよなーと思えることが 甦ってきたりするのですが、 だからといってどうしようもないことなんですけど、 現実に生きていくってこういうことなんでしょうね。 グロリアは夫を撲殺するも、なんだかんだで罪を免れた後、 長男と義母は、この団地から脱出するように田舎に向かうのですが、 グロリアは歯科医の元から母親のために戻った次男と共に、 この団地で暮らし続けていくで幕が閉じる最後の場面。 この家族が分裂する終わり方や、 結局、グロリアは団地に残るということに 何か意味がありそうに感じてしまうのですけど、 たぶん、ないのでしょうね。 それにしてもグロリアに扮した カルメン・マウラという女優の存在はいつも大きく感じます。 大したことでないことを大それたことの様に感じで、見入ってしまう。 女の性というものを体現する様な演技がもう素晴らしいのなんの! 私が凄い好きな女優の1人です。